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2026/08/03 コラム

削除されたLINEや写真は復元できる?デジタル・フォレンジックの方法・費用と証拠化の注意点

はじめに

「問い詰めたら、配偶者が不倫相手とのLINEのトーク履歴を消してしまった」「怪しい写真があったはずなのに、スマートフォンから削除されている」。不貞慰謝料の相談では、このように証拠を削除されてしまったというお悩みが数多く寄せられます。

削除されたデータは、もう取り戻せないと思われがちですが、デジタル・フォレンジックと呼ばれる専門的な解析技術によって、復元できる可能性が残されている場合があります。一方で、復元には技術的な限界があるほか、誰の端末をどのような方法で解析するかによっては法的なリスクも生じるため、正しい知識をもって進めることが大切です。

本記事では、弁護士法人長瀬総合法律事務所が、削除されたLINEや写真の復元の可能性、デジタル・フォレンジックの費用の目安、復元したデータを裁判の証拠として使うための注意点について解説します。

Q&A

Q1.削除されたLINEのトーク履歴は復元できますか?

A.復元できる可能性はありますが、確実ではありません。スマートフォンのデータは、削除操作をした時点では管理情報が消えるだけで、実体のデータが端末内に残っていることがあり、新しいデータで上書きされる前であれば、専門的な解析により復元できる場合があります。また、端末本体から復元できなくても、iCloudGoogleドライブのバックアップ、パソコンに保存されたバックアップ、機種変更前の旧端末などにデータが残っていることもあります。削除から時間が経ち、端末を使い続けるほど上書きが進み、復元の可能性は下がっていきます。

Q2.デジタル・フォレンジックの費用はどのくらいかかりますか?

A.解析の対象(スマートフォン、パソコン、SDカードなど)や調査の範囲によって大きく異なりますが、簡易な調査で数万円程度から、本格的な解析や報告書の作成を含めると数十万円規模になることもあります。データの状態によっては費用をかけても復元できないこともあるため、複数の業者から見積もりを取り、復元できなかった場合の料金の扱い(成功報酬か、着手金が発生するか)を事前に確認しておくことが重要です。

Q3.復元したデータは裁判の証拠になりますか?

A.証拠となり得ます。民事訴訟では証拠の形式に厳格な制限はなく、復元されたメッセージや画像も証拠として提出できます。もっとも、相手方から「捏造ではないか」「改ざんされているのではないか」と争われることがあるため、誰が、いつ、どのような手順で復元したかを明らかにできるよう、専門業者による解析報告書の形に整えておくことが望ましいといえます。

解説

デジタル・フォレンジックとは

デジタル・フォレンジックとは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器に残された記録を、専門的な技術によって保全・解析し、法的手続でも通用する形で証拠化する調査手法をいいます。もともとは犯罪捜査や企業の不正調査の分野で発展してきた技術ですが、近年では、不貞慰謝料や離婚といった家事・男女問題の分野でも、削除されたLINEのトーク履歴、写真、通話履歴、位置情報などの復元のために利用されることが増えています。

復元できる可能性があるデータと条件

データの削除には、大きく分けて「論理的な削除」と「物理的な上書き」があります。通常の削除操作は前者にとどまることが多く、データの実体は端末内の記憶領域に残っているため、上書きされる前であれば復元の可能性があります。逆に、削除後も端末を日常的に使い続けると、新しいデータによる上書きが進み、復元は難しくなっていきます。

端末本体からの復元が難しい場合でも、次のような場所にデータが残っていることがあります。クラウド上のバックアップ(iCloudGoogleアカウント)、パソコンに作成されたバックアップ、機種変更前の旧端末、家族で共有している写真アプリやストレージ、SDカードなどです。LINEについては、トーク履歴のバックアップ設定がされていれば、バックアップ時点までの履歴が残っている可能性があります。

なお、最近の端末は暗号化が進んでおり、ロックを解除できない端末の解析は技術的に困難なことが多い点も、あらかじめ理解しておく必要があります。

誰の端末を解析するのか:法的リスクの確認

フォレンジック調査を検討する際に必ず確認すべきなのが、解析対象の端末を解析する権限があるかという点です。ご自身が契約者・所有者である端末や、ご自身のアカウントのバックアップデータであれば、基本的に問題は生じにくいといえます。

これに対し、配偶者名義の端末を無断で持ち出してロックを解除し、解析業者に持ち込むような方法は、プライバシー侵害として損害賠償の問題が生じ得るほか、配偶者のIDやパスワードを無断で使用してクラウド上のバックアップにアクセスすれば、不正アクセス禁止法違反(3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)のおそれもあります。多くの解析業者も、所有者本人の同意のない端末の解析は受け付けていません。復元によって証拠を得ても、入手方法の違法性を追及されれば、かえって不利な状況を招きかねないため、この点は慎重な判断が必要です。

証拠保全が成否を分ける

復元の可能性を少しでも高めるには、できるだけ早く、端末に手を加えない状態で保全することが重要です。削除に気付いた後も端末を使い続ければ上書きが進みますし、自己流で復元アプリを試すことで、かえってデータの状態を悪化させてしまうこともあります。解析を検討する端末は、可能であれば使用を控え、現状のまま専門業者や弁護士に相談することをおすすめします。

フォレンジックによる証拠化は、一般に次のような流れで進みます。

【図解】デジタル・フォレンジックによる復元と証拠化の流れ

LINE以外に復元・解析の対象となるデータ

フォレンジックの対象は、LINEのトーク履歴に限られません。削除された写真や動画、通話履歴、メール、他のメッセージアプリ(SNSのダイレクトメッセージ等)のやり取り、ウェブの閲覧履歴、地図アプリの検索履歴や位置情報、カーナビやドライブレコーダーの記録なども、解析の対象となり得ます。不貞行為の立証という観点からは、メッセージの内容だけでなく、「いつ、どこにいたか」を示す位置情報系のデータや、ホテル・飲食店の検索履歴などが、ほかの証拠と組み合わせることで重要な意味を持つことがあります。

また、ファイルそのものが復元できない場合でも、ファイルの作成日時や更新日時、撮影場所といった付随情報(メタデータ)から、有用な事実が判明することもあります。

解析業者選びのポイント

フォレンジック業者を選ぶ際は、次の点を確認することをおすすめします。第一に、解析の前提条件です。端末の機種やロックの有無によって対応可否が異なるため、事前診断の有無と、復元できなかった場合の費用の扱いを確認します。第二に、報告書の品質です。裁判での利用を想定した解析報告書(解析手順や改ざんのないことの説明を含むもの)を作成した実績があるかは重要な判断要素です。第三に、データの取扱い体制です。解析の過程で私的な情報を預けることになるため、秘密保持契約の締結やデータの返却・消去の方法も確認しておくべきです。料金の安さだけで選ぶと、立証に使えない結果しか得られないことがあります。

証拠としての信用性を確保する工夫

復元されたデータを裁判で活用する場合、相手方から改ざんの可能性を指摘されることがあります。これに備えるには、復元作業を専門業者に依頼し、解析の対象、日時、手順、結果を記載した解析報告書を作成してもらうことが有効です。データが解析の過程で変更されていないことを技術的に示す手法(ハッシュ値の記録など)が用いられていれば、信用性は一層高まります。

また、復元されたトーク履歴は、その内容だけを単独で提出するのではなく、ほかの証拠(クレジットカードの明細、交通系ICカードの履歴、写真など)と整合する時系列に整理して提出することで、全体としての証明力を高めることができます。

復元できなかった場合の戦い方

費用と時間をかけても、データが復元できないことはあります。しかし、それで請求を諦める必要はありません。不貞行為の立証は、直接的な証拠がなくても、間接証拠(状況証拠)を積み上げることによって可能な場合があります。また、訴訟においては、裁判所を通じた文書送付嘱託や調査嘱託、当事者尋問といった手段により、立証を補強できることもあります。証拠の状況に応じた戦い方は、弁護士にご相談ください。

弁護士に相談するメリット

削除されたデータの復元が問題となる事案で弁護士に相談するメリットとして、次の点が挙げられます。

第一に、フォレンジック調査を行う前に、解析の法的リスク(端末の権限の問題)と、復元されたデータの証拠としての価値について見通しを得られることです。費用をかけて復元しても立証に役立たないのでは意味がありませんから、事前の見極めが重要です。第二に、信頼できる調査の進め方や、解析報告書を訴訟で活用するための証拠化の方法について助言を受けられることです。第三に、復元がかなわなかった場合にも、間接証拠の積み上げや裁判上の手続を組み合わせた代替的な立証方針を立てられることです。

当事務所では、デジタル証拠が争点となる不貞慰謝料事案について、証拠収集から交渉・訴訟まで一貫した対応を行っています。

まとめ

削除されたLINEや写真も、デジタル・フォレンジックによって復元できる可能性があります。復元の成否は、削除後の端末の使用状況やバックアップの有無に左右されるため、早期の証拠保全が何より重要です。

一方で、配偶者名義の端末の無断解析には法的リスクが伴いますし、復元したデータを裁判で活かすには、信用性を確保する証拠化の工夫が欠かせません。証拠を消されてしまったとお悩みの方は、自己流で対処する前に、まず弁護士へご相談ください。


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