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2026/08/01 コラム

不倫調査は探偵に依頼すべきか?費用相場と弁護士会照会(23条照会)との使い分けを解説

はじめに

配偶者の不倫が疑われるとき、多くの方が最初に悩むのが「探偵に調査を依頼すべきか」という問題です。探偵による不倫調査は有力な証拠の入手につながる一方で、費用が数十万円から100万円を超えることもあり、慰謝料として回収できる金額との均衡、つまり費用対効果を慎重に見極める必要があります。

また、弁護士に依頼した場合には、「弁護士会照会(弁護士法23条の2に基づく照会。いわゆる23条照会)」という制度を利用して、不倫相手の氏名や住所などの情報を取得できる場合があります。探偵調査と弁護士会照会は、それぞれ得意とする場面が異なるため、状況に応じた使い分けが大切です。

本記事では、弁護士法人長瀬総合法律事務所が、探偵による不倫調査の費用相場、探偵に依頼すべきケース、弁護士会照会でできること、そして両者の使い分けの考え方について解説します。

Q&A

Q1.探偵の不倫調査費用の相場はどのくらいですか?

A.調査会社や契約形態によって幅がありますが、調査員1名あたり1時間1万円から25000円程度の時間制料金が一般的な目安とされ、調査員2名から3名で数日間の行動調査を行うと、総額で数十万円規模になることが少なくありません。調査期間が長引けば、100万円を超えるケースもあります。時間制のほかに、一定時間分をまとめたパック料金や、成功報酬型の料金体系もありますが、「成功」の定義が曖昧なまま契約するとトラブルになりやすいため、契約前に料金体系と追加費用の有無を必ず確認することが大切です。

Q2.探偵に依頼しなくても慰謝料請求はできますか?

A.できる場合があります。たとえば、配偶者と不倫相手のLINEのやり取りに肉体関係をうかがわせる内容が含まれている場合や、配偶者が不貞行為を認める発言を録音できている場合など、既に一定の証拠がそろっているのであれば、追加の探偵調査をせずに交渉や訴訟を進められることもあります。証拠が十分かどうかの見極めは判断が難しいため、調査を依頼する前に弁護士に相談し、手持ちの証拠の評価を受けることをおすすめします。

Q3.弁護士会照会(23条照会)とはどのような制度ですか?

A.弁護士会照会とは、弁護士が受任している事件について、所属する弁護士会を通じて、官公庁や企業などに対して必要な事項の報告を求める制度です(弁護士法23条の2)。不貞慰謝料の事案では、たとえば判明している携帯電話番号から、携帯電話会社に対して契約者の氏名や住所の照会を行い、不倫相手を特定するといった利用方法が考えられます。弁護士に事件を依頼していることが前提となる制度であり、個人が直接利用することはできません。

解説

不貞慰謝料請求に必要な2つの要素

不倫相手に慰謝料を請求するためには、大きく分けて2つの要素が必要です。1つ目は、不貞行為(配偶者以外の者との肉体関係)の存在を裏付ける証拠です。慰謝料請求は民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求であり、請求する側が不貞行為の存在を立証する責任を負います。2つ目は、請求の相手方の特定です。氏名や住所がわからなければ、内容証明郵便を送ることも、訴訟を提起することもできません。

探偵調査と弁護士会照会は、この2つの要素のどちらが欠けているかによって、使い分けることになります。

【図解】探偵調査と弁護士会照会の使い分けの基本的な考え方

探偵調査でできることと費用の考え方

探偵(調査会社)による不倫調査の中心は、対象者の行動を尾行・張り込みによって確認する行動調査です。配偶者と不倫相手がラブホテルや相手の自宅マンションに出入りする場面を撮影した調査報告書は、不貞行為を推認させる有力な証拠となります。裁判実務では、ラブホテルへの2人での出入りは、特段の事情がない限り肉体関係があったことを推認させると扱われる傾向にあります。

費用は前述のとおり高額になりがちです。費用対効果を考えるうえでは、不貞慰謝料の一般的な水準(事案にもよりますが、数十万円から300万円程度の範囲で認められることが多いとされています)と調査費用とを比較する視点が欠かせません。調査費用が見込まれる慰謝料額を上回るようでは、経済的には本末転倒になりかねません。

なお、探偵業を営むには探偵業法に基づく公安委員会への届出が必要です。届出番号の確認や、調査方法が違法なもの(住居侵入や差別的調査など)でないかの確認も、依頼前に行っておくべきポイントです。

探偵に依頼すべきケース

探偵への依頼を前向きに検討してよいのは、おおむね次のような場合です。第一に、不貞行為そのものを裏付ける証拠がまだない場合です。LINEのやり取りだけでは親密さはわかっても肉体関係までは立証しにくいことがあり、ホテルへの出入り場面の撮影が決め手になることがあります。第二に、離婚や親権、財産分与も見据えて、相手に言い逃れを許さない確実な証拠が必要な場合です。第三に、配偶者の警戒が強く、自分での証拠収集が困難な場合や、自力での調査が違法行為(無断でのGPS取付けやスマートフォンののぞき見など)になりかねない場合です。

逆に、既に十分な証拠がある場合や、配偶者が不貞を認めて書面化に応じる見込みがある場合には、高額な調査費用をかける必要性は低いといえます。

弁護士会照会でできることと限界

弁護士会照会は、不倫相手の特定の場面で力を発揮します。たとえば、携帯電話番号、車両のナンバー、勤務先名など、相手につながる断片的な情報があれば、照会によって氏名や住所の特定に至る可能性があります。照会を受けた団体には報告すべき公法上の義務があると解されていますが、個人情報保護などを理由に回答が得られない場合もあり、確実に情報が取得できるとは限りません。

また、弁護士会照会はあくまで保有情報の報告を求める制度であり、不貞行為の現場を押さえるような証拠を新たに作り出すことはできません。不貞の事実自体の立証手段としては、探偵調査やご自身で適法に収集した証拠が中心となります。

費用対効果の試算:調査費用・弁護士費用と回収見込みの比較

調査を依頼するか判断する際には、最終的にいくら回収できる見込みがあるかという視点で、全体の収支を試算してみることが有益です。考慮すべき主な項目は、探偵調査の費用、弁護士費用(着手金・報酬金)、そして請求できる慰謝料の見込み額です。慰謝料の見込み額は、婚姻期間、不貞の期間や態様、不貞によって離婚や別居に至ったかどうか、相手方の資力などの事情によって変動します。一般に、不貞が原因で離婚に至った場合は、離婚に至らなかった場合よりも高額が認められる傾向にあります。

たとえば、慰謝料の見込みが100万円程度の事案で、調査費用に80万円を投じてしまうと、弁護士費用も考慮すれば手元にほとんど残らない、あるいは赤字になることもあり得ます。他方、離婚を見据えており、財産分与や親権の判断にも不貞の証拠が影響し得る事案では、慰謝料額だけでは測れない価値が証拠にあることもあります。何のために、どの水準の証拠が必要なのかを最初に定めることが、無駄のない調査につながります。

また、相手方に支払能力がなければ、勝訴しても現実の回収は困難です。相手の職業や資力に関する情報も、費用をかける前に確認しておきたい要素の1つです。

調査費用は不倫相手に請求できるか

探偵調査の費用を不倫相手に損害として請求できるかについては、裁判例の判断が分かれています。不貞行為の立証のために調査が必要であったと認められる場合に、相当因果関係のある損害として費用の一部が認められた裁判例がある一方で、調査の必要性を否定し、損害として認めなかった裁判例もあります。認められる場合でも全額ではなく一部にとどまることが多いため、「調査費用は後で相手に払わせればよい」という前提で高額な調査を行うことは避けるべきです。

依頼するタイミングと弁護士との連携

探偵調査を行う場合、タイミングも成果を左右します。不倫を問い詰めた後では、配偶者の警戒が強まり、しばらく接触を控えるなどして調査が空振りに終わりやすくなります。証拠を確保するまでは平静を装い、配偶者と不倫相手が会う可能性の高い日(出張や残業と称する日、特定の曜日など)に絞って調査を行うことで、調査時間を圧縮し、費用を抑えることができます。

また、慰謝料請求や離婚を見据えるのであれば、調査会社への依頼前に弁護士に相談し、立証に必要な調査内容(撮影すべき場面、報告書に記載してほしい事項)をすり合わせておくことをおすすめします。せっかく費用をかけて調査をしても、滞在時間が短い、人物の特定ができないなど、立証の観点からは不十分な報告書になってしまうことがあるためです。

弁護士に相談するメリット

探偵に依頼するかどうかを迷っている段階で弁護士に相談することには、次のようなメリットがあります。

第一に、手持ちの証拠の評価を受けられることです。既にある証拠で請求が可能であれば、調査費用そのものを節約できます。第二に、調査が必要な場合でも、何を、どの程度立証すべきかという目的が明確になり、漫然と長期間の調査を続けて費用がふくらむ事態を避けやすくなります。第三に、弁護士会照会など弁護士でなければ利用できない手段を組み合わせ、相手の特定から証拠収集、交渉、訴訟までを一貫した方針のもとで進められることです。

当事務所では、不貞慰謝料に関するご相談を多数取り扱っており、証拠の状況に応じた現実的な見通しをご説明したうえで、費用対効果を踏まえた進め方をご提案しています。

まとめ

探偵による不倫調査は、不貞行為の決定的な証拠を得る手段として有効ですが、費用が高額になりやすく、すべてのケースで必要となるわけではありません。不倫相手の特定が課題であれば、弁護士会照会(23条照会)の活用が考えられますし、既に証拠がそろっていれば調査自体が不要なこともあります。

大切なのは、「証拠の状況」と「相手の特定の状況」を整理し、目的に合った手段を選ぶことです。調査会社と契約する前に、まずは弁護士にご相談いただき、費用対効果を踏まえた最適な進め方を確認されることをおすすめします。


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