2025/01/27 コラム
不倫相手に請求できる慰謝料と配偶者に請求できる慰謝料
慰謝料の対象はどこまで? 二者への請求をめぐるポイントを徹底解説
はじめに
不倫・浮気が発覚したとき、多くの方がまず思い浮かべるのは「不倫相手にも責任を取ってほしい」「配偶者に制裁を加えたい」といった感情面の問題です。実際、法律上も不貞行為(不倫)をした当事者が複数いる場合、不倫相手と配偶者の双方に慰謝料を請求する可能性があります。
しかし、「どちらを優先すればよいのか?」「そもそも両方に請求できるのか?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。結論としては、不倫相手と配偶者の双方に請求することが可能なケースがある一方、実際の請求方法や金額、交渉手順などはさまざまな要因によって変わります。
本稿では、不倫相手に請求できる慰謝料と、配偶者に請求できる慰謝料の違いや実務上の注意点を解説していきます。この記事を読めば、請求先をどうするか、どのような手続き・交渉が必要になるかについて、大まかなご理解の参考になるかと思います。
本稿は、弁護士法人長瀬総合法律事務所が作成したものです。不倫問題に直面し、どのように対応すべきか迷っている方は、ぜひ専門家への相談もご検討ください。
Q&A
はじめに、「不倫相手に対する慰謝料請求」と「配偶者に対する慰謝料請求」に関する代表的な疑問をQ&A形式でご紹介します。
不倫相手と配偶者の両方に慰謝料を請求できるのですか?
法律上は、両方に請求することが可能です。夫婦には相互に貞操義務があり、これを破った配偶者は責任を負います。同時に、不倫相手も故意や過失によって夫婦の信頼関係を壊した場合、不法行為としての賠償責任を問われる可能性があります。
不倫相手と配偶者に請求できる金額を合計すると、相場より高額になりますか?
不倫相手と配偶者、それぞれに対して慰謝料を請求することはできますが、「請求総額が相場より際限なく上積みされる」というわけではありません。実際には、被害者が受けた精神的苦痛の全体像を基準にして、請求先をどちらとするか、どのように配分するかといった判断が行われます。結果的に1人からまとめて支払われる場合もあれば、2人が連帯して支払う場合もあるなど、個別事案によって異なります。
配偶者にも慰謝料を請求する場合、離婚の手続きと一緒に行うべきですか?
離婚と慰謝料はセットで取り扱われることが多いですが、離婚しなくても配偶者に慰謝料を請求することは可能です。また、離婚調停や協議離婚の場面で、「不倫に伴う慰謝料」と「財産分与」「養育費」などを一括で話し合うこともよくあります。ケースバイケースで、どのように進めるのが得策かは変わります。
不倫相手から「配偶者が既婚者だと知らなかった」と言われたら?
不倫相手に慰謝料請求をするためには、不倫相手に故意または過失(注意不足など)があることが必要です。「相手が結婚していると知らなかった」と主張された場合、誠実に独身だと偽られていたなどの事情があると認定されれば、不倫相手には責任がないと判断されることもあります。もっとも、どの程度の調査をすべきかという点も考慮されるため、最終的には具体的な証拠や事実関係で判断されることになります。
不倫相手から支払ってもらえなかったら、配偶者に請求できますか?
不倫相手が経済的に困窮しているなどの理由で支払いが難しい場合、配偶者に対して別途請求を行うことは可能です。ただし、両者に対して二重取り(不当に重複して多額を受け取る)は認められません。「被った精神的苦痛を補う範囲で」の請求となるため、どちらからいくら受け取るか、最終的に合計額がいくらになるかは、全体の状況を踏まえて判断されます。
解説
ここからは、不倫相手に対する慰謝料請求と、配偶者に対する慰謝料請求について、さらに解説をしていきます。
1. 不倫相手に請求する慰謝料の根拠
不倫相手に対しては、民法709条・710条に規定される「不法行為に基づく損害賠償請求」として慰謝料請求が可能です。
- 夫婦の信頼関係を侵害した責任
配偶者のある人と肉体関係を結んだ時点で、たとえ相手が結婚しているとは知らなかったと主張しても、一定の注意を払えば気づけたはずという場合には過失が認定されることがあります。 - 既に夫婦関係が破綻していた場合は責任が否定される場合も
例えば長期間の別居などにより、夫婦としての実質的な実態がなくなっていた場合には、不倫相手に責任が生じないことがあります。 - 不倫相手への請求手
- 証拠収集
探偵の報告書やLINEのやりとりなどを整理し、「夫婦の関係を壊した責任を問うに十分な」証拠を用意します。 - 内容証明郵便や弁護士からの請求書送付
不倫相手に対して、慰謝料請求の意思を伝えます。 - 示談交渉
相手が応じれば、金額や支払い方法、接触禁止などの条件を定めた示談書を作成し、合意します。 - 裁判手続き
示談が成立しない場合は、裁判所に訴えを提起して慰謝料を求める流れになります。
- 証拠収集
2. 配偶者に請求する慰謝料の根拠
次に、配偶者に対する慰謝料請求は、同じく民法709条・710条を根拠としつつ、「夫婦には互いに貞操義務がある」という点から責任を追及する形をとります。
- 夫婦間の話し合いで解決するケースが多い
不倫行為の責任を問う際、配偶者に離婚や財産分与、養育費などを求める話し合いが同時に進むケースが大半です。結果として、「離婚するときの条件」という枠組みの中で慰謝料が取り決められることも多くなります。 - 離婚しない場合でも請求は可能
離婚を望まない場合でも、配偶者に対して不法行為に基づく慰謝料を請求すること自体は可能です。ただし、婚姻関係を続けながらの請求は、相手との関係修復に影響を及ぼすことがあり、慎重な判断が必要です。 - 配偶者への請求手順
- 不貞行為の証拠確認
配偶者との話し合い前に、確かな証拠があるかどうかを再度整理します。 - 協議・離婚調停などで主張
離婚をするかどうか、夫婦で話し合いを進める中で、慰謝料も請求し必要に応じて調停を申立てます。 - 合意書の作成
離婚や婚姻継続のいずれにしても、慰謝料の金額や支払い方法、支払い期限などを文書化しておくと後のトラブルを防ぎやすくなります。 - 訴訟対応
離婚訴訟や慰謝料請求の民事訴訟で、裁判所が金額や支払い方法を判断する場合もあります。
- 不貞行為の証拠確認
3. 同時請求する場合の注意点
- 二重取りに注意
不倫相手と配偶者の両方に請求することができたとしても、被害者が受けた精神的苦痛を超える金額を重複して得ることは認められません。仮に両者から慰謝料を受け取る場合は、合計額が被害者の損害相当額を超過しない範囲で収まるよう調整されるのが通常です。 - 夫婦間の話し合いが先になるケースが多い
実務では、まず配偶者との離婚条件や婚姻継続の条件を決め、同時に「不倫相手との示談交渉を進めるかどうか」を検討することが一般的です。配偶者が「自分が全額支払うので、不倫相手には請求しないでほしい」と言ってくるケースもありますが、それを受け入れるかは被害者の自由です。 - 時効や請求期限の問題
不倫行為を知ったときから3年で慰謝料請求権が時効になる可能性があります。請求先や請求方法を迷っている間にも時効が進行するため、早期に方針を固めることが重要です。
弁護士に相談するメリット
不倫相手と配偶者の双方に請求する場合、感情的な複雑さや交渉の難易度がさらに高まります。弁護士に相談することで、以下のメリットが期待できます。
- 最適な請求先・請求方法のアドバイス
実務経験を持つ弁護士は、請求相手や請求金額の配分、交渉のタイミングなどを総合的に検討し、あなたにとってベストな方法を提案できます。 - 冷静な交渉とトラブル回避
被害者自身が直接相手に連絡を取ると、感情的対立がヒートアップしがちです。弁護士を通すことで冷静な交渉が進みやすくなり、精神的負担の軽減にもつながります。 - 時効や法的リスクへの対応
慰謝料請求には時効があり、また証拠収集の方法によっては違法性を指摘されるリスクもあります。弁護士であれば、適切な手順・手続きで進められるようアドバイスし、トラブルを回避できるでしょう。 - 将来的な紛争再燃を防ぐ示談書の作成
示談がまとまった際、適切な文言を盛り込んだ契約書や示談書を作成しておくと、後々の争いを減らせます。弁護士は将来起こり得る問題も視野に入れて文書を作るため、安心感が高まります。
不倫問題は夫婦関係の根幹を揺るがすため、一度決着したように見えても、後々「やっぱり納得できない」と感情が生じてしまうことも珍しくありません。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、法的知識のみならず、当事者の思いにも寄り添いながら解決策を模索していきます。
まとめ
- 不倫相手・配偶者の両方に慰謝料を請求できる可能性がある
不倫相手には「夫婦の信頼関係を侵害した責任」、配偶者には「貞操義務違反」として、それぞれ不法行為を主張できる。 - 両者に請求する場合、二重取りは認められない
被害者が受けた精神的苦痛を補う範囲での賠償が基本であり、合計額が過剰にならないように調整が行われることが多い。 - 離婚するか否かで請求の進め方が変わる
離婚調停などで一括して解決を図るケースもあれば、婚姻継続しながら配偶者に慰謝料請求するケースもある。 - 早めの決断と行動が重要
時効の問題や、配偶者との話し合いでこじれないためにも、証拠確保と法的アドバイスは早期に受けることを推奨。 - 弁護士のサポートで冷静かつ適切な交渉が可能
不倫問題は感情面の対立が深刻化しやすい。専門家に依頼することで、将来的なトラブルを最小限に抑えられる。
不倫問題における慰謝料請求は「どこまで請求できるのか?」という疑問を抱きがちですが、実際には「自分がどのようなゴールを望むか」によって大きくシナリオが変わります。たとえば「離婚したいのか」「夫婦関係を修復したいのか」「不倫相手の責任を追及したいのか」など、方向性によって手続きや交渉方針が異なるのです。
もし、不倫相手や配偶者への慰謝料請求について具体的なお悩みをお持ちなら、まずは弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。豊富な経験と実績をもとに、あなたの最善の選択肢を一緒に探っていきます。
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