コラム

2025/12/06 コラム

不倫問題が子どもの学業や将来に及ぼす影響とケア方法

~子どもの未来を守り、健やかな成長を支えるために~

はじめに

不倫問題が家庭内で発覚したとき、最も深刻な影響を受けるのは、往々にして子どもたちです。両親間の対立や家庭内の不穏な空気を敏感に察知し、子どもは深刻な心理的ストレスを抱えます。このストレスは、集中力の低下による学業成績への影響や、他者への不信感からくる人間関係の構築の困難さ、さらには将来への不安といった形で、子どもの健やかな成長と未来に影を落とす可能性があります。

このような状況において、親として最も優先すべきは、夫婦間の問題とは切り離し、子どもの「安心感」を確保することです。そして、離婚を選択する場合、子どもの養育に関する取り決めは「子の利益(子どもの最善の利益)」を第一に考えて決定されなければなりません。

本稿では、不倫問題が子どもの学業や将来に与える影響を解説するとともに、子どもの心をケアする具体的な方法、さらに2024年(令和6年)に成立した民法改正(家族法改正)による「共同親権」の導入など、子どもの養育に関する新たな法的ルールについて詳しく解説します。

不倫問題や、離婚に伴う子どもの親権・養育に関するご相談は、ぜひ当事務所へご連絡ください。

Q&A

Q1:不倫問題は、子どもの学業や将来に具体的にどのような影響を及ぼしますか?

主に以下の影響が懸念されます。

  1. 心理的ストレスによる学業の低下
    家庭内の不和がストレスとなり、集中力や学習意欲が低下し、学業成績に影響が出る場合があります。
  2. 人間関係への影響
    最も信頼していた親の裏切りや対立を目の当たりにすることで、他者への不信感を抱き、友人関係や将来のパートナーとの信頼関係を築くのが難しくなる場合があります。
  3. 将来への不安
    家庭という安全基地が揺らぐことで、将来に対して悲観的になったり、自己肯定感が低下したりする可能性があります。

Q2:子どもへの影響を最小限に抑えるために、親はどうすればいいですか?

重要なのは、子どもに「あなたは悪くない」「両親から愛されていることに変わりはない」というメッセージを伝え続けることです。具体的には、子どもの前で感情的に相手を非難しない、日常生活のリズム(食事、睡眠、通学)を可能な限り維持する、子どもの話を傾聴し、安心できる環境を整える、ことが挙げられます。必要に応じて、専門のカウンセラーやスクールカウンセラーの助けを借りることも重要です。

Q3:【法改正】2024年に成立した民法改正で、離婚後の「親権」制度が大きく変わると聞きました。

はい、日本の家族法制における歴史的な変更です。これまでは離婚後、父母のどちらか一方のみが親権を持つ「単独親権」が原則でした。今回の改正(20265月までに施行予定)により、父母の協議によって、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」も選択できるようになります。

解説

ここからは、不倫問題が子どもに与える影響と、2024年の法改正を踏まえた親権・養育のあり方について解説します。

1)子どもの学業や将来に与える影響

学業成績への影響

家庭内の緊張状態は、子どもの自律神経に影響を与え、集中力の低下や不眠を招くことがあります。その結果、授業内容が頭に入らなかったり、学習意欲そのものが失われたりして、学業成績が低下するケースは少なくありません。

人間関係・精神面への影響

両親の対立は、子どもに「自分はどちらの味方をすればよいのか」という「忠誠心の葛藤」を引き起こします。また、親の不倫という事象は、子どもに「人を信じること」への疑念を抱かせ、対人関係において過度に警戒的になったり、逆に不安定な愛着行動を示したりする原因となることがあります。

将来への不安

「お父さんとお母さんが別れたら、自分はどうなるのか」「経済的に大丈夫なのか」といった直接的な不安が、子どもの精神的安定を奪います。

2)子どもへの影響を最小限に抑えるためのケア

不倫問題が発覚した際、親は以下の点を強く意識する必要があります。

  • 子どもの前での対立を避ける
    子どもは親の口論や非難を聞くだけで深く傷つきます。夫婦間の話し合いは、子どものいない場所で行ってください。
  • 日常生活の維持
    可能な限り、これまで通りの生活リズムを保ち、子どもが「自分の日常は守られている」と感じられる環境(安心感)を提供することが最優先です。
  • 専門家の活用
    親自身も精神的に不安定になりがちです。親が自身のメンタルケアを行うと同時に、子どもの様子に異変を感じたら、児童精神科医や臨床心理士、スクールカウンセラーといった専門家に相談してください。

3)【2024年民法改正】「共同親権」の導入と親権の選択

今回の法改正の柱の一つは、「共同親権」の導入です。これは、不倫問題の末に離婚を選択する家庭にとっても重要な変更点となります。

単独親権か共同親権かを選択

改正法では、離婚時に父母が話し合い(協議)、まずは「単独親権」にするか「共同親権」にするかを選択します。協議が調わない場合や、DV・虐待のおそれがある場合には、家庭裁判所が「子の利益」の観点から、単独親権か共同親権かを決定します。

「共同親権」とは何か?

共同親権とは、離婚後も父母双方が法的な「親権者」であり続ける制度です。これは、子どもの養育に双方の親が責任を持ち続けることを促すものです。

ただし、「共同親権=全てのことを5050で決める」という意味ではありません。 改正法は、親権の行使について以下のように整理しています。

    • 重要な決定事項(例:子どもの進学先、重大な医療行為の同意、転居を伴う居所の指定など)
      父母双方の同意が必要です。意見が対立した場合は、家庭裁判所が判断します。
    • 日常の行為・急迫の事情(例:日常の食事やしつけ、急な病気や怪我の治療など)
      一方の親が単独で決定できます。

「監護者」の指定

共同親権を選択した場合でも、多くの場合、実際に子どもと同居して日常の世話をする親(主に「監護者」と呼ばれます)を定めることになります。監護者に指定された親は、日常の監護教育や居所の決定などを単独で行う権限が強化されます。

DV・虐待ケースでの共同親権の除外

法改正にあたり、「DVや虐待があった場合でも共同親権が強制されるのではないか」という強い懸念がありました。

改正法では、この点に配慮し、父母の一方から他方へのDV(身体的・精神的暴力)や、子どもへの虐待のおそれがあると裁判所が認める場合には、共同親権は認められず、必ず「単独親権」としなければならないと明確に定められました。不倫問題がDVやモラルハラスメントと複合している場合、この規定は非常に重要です。

4)【法改正】親子交流(面会交流)の新たなルール

子どもの健やかな成長のためには、離婚後も両親と適切な関係を保つこと(親子交流)が重要とされています。

  • 試行的実施制度の導入
    家庭裁判所の手続中に、親子交流の具体的な方法や頻度を決めるため、裁判所の関与のもとで試験的に交流を行ってみる「試行的実施」の制度が導入されました。これにより、安全かつ円滑な交流のルールを作りやすくなります。
  • 祖父母等との交流
    父母以外の親族(祖父母など)と子どもとの交流についても、家庭裁判所の手続が利用できるルールが設けられました。

弁護士に相談するメリット

不倫問題が絡む離婚協議は感情的になりやすく、特に子どもの親権については熾烈な対立を生むことがあります。

  1. 「子の利益」を最優先した親権の主張
    「共同親権」と「単独親権」のどちらが、その家庭の状況(対立の程度、父母の養育能力、DVの有無など)において「子の利益」に資するか、法的な観点から冷静に分析し、依頼者の代理人として主張します。
  2. DV・虐待事案への的確な対応
    DVやモラハラが背景にある場合、共同親権を回避し、確実に単独親権を獲得するために、必要な証拠(診断書、録音、警察への相談記録など)の収集からサポートし、裁判所に的確な主張を行います。
  3. 養育費・親子交流の具体的な取り決め
    子どもの将来の学費なども見据えた適正な養育費の算定や、子どもの年齢や心情に配慮した安全な親子交流のルールについて、具体的な取り決め(公正証書作成など)をサポートします。
  4. 家庭内の問題の法的整理
    不倫の慰謝料問題と、子どもの親権・養育費問題を法的に切り分け、あるいは連動させながら、最適な解決策を提案し、迅速な解決を目指します。

まとめ

  • 不倫問題による家庭内の不和は、子どもの学業や精神面に深刻な悪影響を及ぼすため、子どもの「安心感」の確保が最優先課題である。
  • 2024年の民法改正により、離婚後の親権制度が大きく変わり、「共同親権」が選択肢として導入された(20265月までに施行)。
  • 共同親権は、「重要な決定事項」は双方の同意、「日常行為」は単独で可能、という仕組みである。
  • DVや虐待のおそれがある場合には、共同親権は認められず、「単独親権」となることが法律で定められており、安全性に配慮されている。
  • 弁護士は、「子の利益」を最大化する観点から、新たな親権制度や親子交流のルールに基づき、最適な解決(単独親権の獲得、養育費の確保など)をサポートします。

不倫問題が子どもの学業や将来に及ぼす影響、あるいは新たな親権制度についてお悩みの方は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。


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