2026/02/20 コラム
【弁護士監修】不倫裁判の山場!「証拠提出」と「証人尋問」の流れと絶対に失敗しないための注意点
はじめに
不倫(不貞行為)の慰謝料請求訴訟において、裁判官は「どちらの言い分が真実か」を、提出された証拠と、法廷での証言のみに基づいて判断します。
どれだけ真実を語っていても、証拠が不十分であったり、尋問で不自然な回答をしてしまったりすれば、敗訴のリスクが高まります。
まずは、裁判における証拠と尋問に関する基本的な疑問をQ&Aで確認しましょう。
裁判の証拠と尋問に関するQ&A
Q1. 裁判になったら、毎回裁判所に行かなければなりませんか?
いいえ、基本的には弁護士だけが出廷します。
裁判(口頭弁論)は月に1回程度のペースで進みますが、通常は代理人弁護士が出廷し、主張をまとめた書面を提出するため、依頼者ご本人が毎回足を運ぶ必要はありません。
ただし、「本人尋問(証人尋問)」が行われる日だけは、必ず本人が出廷する必要があります。また、裁判官から和解を勧められた場合(和解期日)にも、出廷を求められることがあります。
Q2. 決定的な証拠を隠し持っています。裁判の最後に「切り札」として出すのは効果的ですか?
いいえ、それはリスクがあります。
テレビドラマでは最後に逆転の証拠を出すシーンがありますが、実際の裁判では「時機に後れた攻撃防御方法」として、却下(証拠として採用されない)されるリスクがあります。
裁判を遅延させないため、適切なタイミング(通常は争点が整理された段階)で提出するのが原則です。出し惜しみは禁物です。
Q3. 法廷で話すのが苦手です。相手の弁護士に厳しく追及されたらどうすればいいですか?
事前の「リハーサル」がすべてです。
相手方の弁護士は、あなたの証言の矛盾を突き、信用性を落とそうと厳しい質問をしてくることがあります(反対尋問)。
しかし、事前に担当弁護士と綿密な打ち合わせを行い、予想される質問への回答を練習(リハーサル)しておけば、過度に恐れる必要はありません。その場で嘘をついたり、感情的になったりするのが一番のマイナスです。
解説:裁判の勝敗を分ける「証拠提出」のルール
日本の民事裁判は「証拠裁判主義」です。事実があったかどうかは、全て証拠によって認定されます。
1. どのようなものが「証拠」になるか
不貞慰謝料請求訴訟においては、以下のようなものが証拠(書証)として提出されます。これらは「甲第1号証」「甲第2号証」といった番号(号証)を振って整理されます。
- 不貞行為を裏付けるもの
探偵の調査報告書、ラブホテルの出入り写真、性行為を推認させるLINEやメールの履歴、動画・音声データなど。 - 婚姻関係破綻や精神的苦痛を裏付けるもの
診断書(うつ病など)、別居の事実を示す住民票、不貞発覚後の日記やメモ、夫婦間のやり取りの履歴など。
2. 証拠提出のタイミングと「陳述」
証拠は、単に裁判所に郵送すれば終わりではありません。法廷(口頭弁論期日)において、裁判官の面前で「取り調べ」の手続きを経る必要があります。
これを「書証の申し出」といいます。
- 早期提出の重要性
前述の通り、裁判の進行に応じて適切なタイミングで提出しなければなりません。後から「実はこんな写真がありました」と出しても、「なぜ今まで出さなかったのか」と信用を疑われたり、採用を拒否されたりすることがあります。 - 証拠説明書の作成
「この写真は、いつ、どこで撮影されたもので、何を証明するためのものか」を説明する「証拠説明書」をセットで提出し、裁判官の理解を助けます。
3. LINEやメールを提出する際の注意点
LINEのスクリーンショットなどを提出する場合、前後の文脈が重要になります。「愛してる」という一言だけを切り取るのではなく、その会話に至る流れや日時がわかる状態で提出する必要があります。
また、データの改ざんを疑われないよう、元データ(スマートフォン本体)の保存も重要です。
解説:裁判のクライマックス「本人尋問・証人尋問」
裁判が進み、双方の主張が出尽くし、書面の証拠だけでは事実認定が難しい場合(例:「不貞行為はなかった」と相手が否認している場合など)に、最終的な確認手段として行われるのが「尋問」です。
1. 尋問の種類
- 本人尋問: 原告(あなた)や被告(不倫相手・配偶者)が法廷に立ち、話をする手続き。
- 証人尋問: 当事者以外の第三者(例:不倫を目撃した友人など)が法廷に立つ手続き。不貞裁判ではあまり多くありませんが、ケースによっては行われます。
2. 尋問当日の流れ
尋問は、通常、以下のような流れで行われます。これを「主尋問・反対尋問」といいます。
- 宣誓
証言台の前に立ち、「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないこと」を宣誓し、宣誓書に署名押印します。嘘をつくと「過料」や「偽証罪(証人の場合)」に問われる可能性があります。 - 主尋問(しゅじんもん)
まず、自分の味方である弁護士から質問されます。事前に打ち合わせた通りのストーリーに沿って、事実を淡々と、かつ説得力を持って話します。 - 反対尋問(はんたいじんもん)
次に、相手方の弁護士から質問されます。ここが最大の難所です。相手は、あなたの証言の矛盾を突いたり、怒らせて失言を誘ったり、記憶違いを指摘したりして、「この人の言っていることは信用できない」という印象を裁判官に植え付けようとします。 - 補充尋問(ほじゅうじんもん)
最後に、裁判官から質問があります。裁判官が疑問に思っている点や、判決を書く上で確認しておきたい重要なポイントについて聞かれます。
3. 尋問で失敗しないための心得
法廷という独特の緊張感の中で、相手方弁護士の攻撃的な質問にさらされると、頭が真っ白になってしまうことがあります。以下のポイントを心に留めておく必要があります。
- 聞かれたことだけに答える
余計なことを話すと、そこから揚げ足を取られます。「はい」「いいえ」で答えられる質問には短く答えます。 - わからないことは「わかりません」と言う
記憶があいまいなことを無理に答えたり、推測で話したりすると、客観的証拠と矛盾した時に「嘘つき」とみなされます。「覚えていません」と言うことは恥ではありません。 - 感情的にならない
相手方弁護士は、わざとあなたを怒らせようとするかもしれません。カッとなって汚い言葉を使ったり、喧嘩腰になったりすると、裁判官の心証(印象)が悪くなります。常に冷静に、裁判官に向かって話す意識を持ちましょう。 - 沈黙しない
答えに詰まって長時間黙り込むと、「都合が悪いことがあるのでは?」と疑われます。質問の意味がわからなければ「もう一度お願いします」と聞き返しても構いません。
弁護士に依頼するメリット
証拠提出と尋問は、プロである弁護士の腕の見せ所であり、本人訴訟(弁護士をつけずに自分で行う裁判)との差が大きく出る部分です。
1. 証拠の選別と構成
手元にある全ての資料をただ出せばよいわけではありません。「この証拠は逆にこちらに不利になるから出さない」「この証拠はこのタイミングで出して相手の嘘を封じる」といった戦略的な判断は、経験豊富な弁護士にしかできません。
2. 陳述書(ちんじゅつしょ)の作成
尋問の前に、自分の言い分をまとめた「陳述書」を提出します。これは尋問の台本ともなる重要な書類です。弁護士は、裁判官が読みやすく、かつ法的に意味のある事実(不貞の悪質性や被害の深刻さ)を強調した陳述書を作成します。
3. 徹底的な尋問リハーサル
当事務所では、尋問の前に必ず模擬尋問(リハーサル)を行います。
弁護士が相手方弁護士役になり、意地悪な質問や厳しい突っ込みを実際に投げかけます。これによって、「どのような質問が来るか」「どう答えればよいか」を予習できるため、本番での緊張やミスを大幅に減らすことができます。
4. 法廷での防御(異議申し立て)
尋問中、相手方弁護士が誘導尋問や、関連性のない嫌がらせのような質問をしてきた場合、弁護士はその場で「異議あり(異議を述べます)」と助け船を出し、不当な質問を遮ることができます。
まとめ
裁判の口頭弁論、特に証拠調べと証人尋問は、不倫トラブル解決の最終局面であり、最も専門性が問われるプロセスです。
- 証拠は「出し方」と「タイミング」が命。出し惜しみや遅刻は厳禁。
- 尋問は「主尋問(味方)」と「反対尋問(敵)」の攻防。
- 反対尋問で感情的にならず、矛盾のない証言をすることが勝訴への鍵。
- 事前の綿密な打ち合わせとリハーサルなしに、法廷に立つのは極めて危険。
裁判まで進んでしまった場合、もはや当事者だけで対応するのは困難です。
弁護士法人長瀬総合法律事務所では、多数の裁判経験を持つ弁護士が、証拠の収集から法廷での尋問対応まで、あなたを全面的にサポートします。「法廷で相手と対峙するのが怖い」という方も、私たちが盾となり、あなたの正当な主張を裁判官に届けます。
不安な点は、尋問の期日が決まる前に、お早めにご相談ください。
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