2025/12/04 コラム
不倫問題が原因で社会的非難を受ける場合の対応策
信頼を守り、問題を適切に解決するための具体策
はじめに
不倫問題が明るみに出ると、特に現代社会では、SNSやインターネット掲示板などを通じて瞬時に情報が拡散し、深刻な社会的非難を受けることがあります。これは個人の名誉やプライバシーを著しく侵害するだけでなく、家族、職場、地域社会にも影響を及ぼし、築き上げてきた信頼関係が根本から損なわれる事態につながります。
このような状況では、動揺や怒りといった感情的な対応は事態をさらに悪化させる可能性があります。冷静かつ迅速に事実関係を把握し、法的な権利とリスクを理解した上で、戦略的に対応することが、自身の名誉と将来を守るために不可欠です。
本稿では、不倫問題が原因で社会的非難を受けた場合、特にインターネット上での誹謗中傷やプライバシー侵害に焦点を当て、その具体的な対応策について法改正の最新情報を交えながら解説します。
不倫問題に関連する名誉毀損や社会的非難に関するトラブル解決が必要な方は、ぜひ当事務所へご相談ください。
Q&A
Q1:不倫問題が原因で社会的非難を受ける主なケースは何ですか?
以下の3つのケースが典型例です。
- SNSでの拡散
不倫の事実や、時には虚偽の情報、個人の写真や氏名(プライバシー情報)がX(旧Twitter)やInstagram、匿名掲示板などで拡散され、誹謗中傷の的となるケース。 - 職場や地域での噂の拡大
問題が職場内や近隣住民の間で広まり、信用が低下し、業務や日常生活に支障が出るケース。 - メディアでの報道
当事者が著名人であったり、事件性があったりする場合に、週刊誌やネットニュースで報道され、社会的な信用が決定的に損なわれるケース。
Q2:社会的非難を受けた場合、最初に行うべきことは何ですか?
まずは冷静に証拠を保全することです。感情的になって反論したり、相手と接触したりする前に、非難の原因となっている投稿や記事のスクリーンショット(URL、投稿日時、内容がわかるもの)を確実に保存してください。その上で、直ちに弁護士に相談し、その情報が法的に「名誉毀損」や「プライバシー侵害」にあたるか、どのような対応が可能かを検討します。初期対応の速さが、その後の展開を左右します。
Q3:ネット上の匿名投稿者に対して、法的に対抗する手段はありますか?
はい、可能です。主な法的手段として「削除請求」「損害賠償請求」そしてその前提となる「発信者情報開示請求」があります。特に「発信者情報開示請求」については、2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法(正式名称「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」)により、従来の手続よりも迅速かつ実効性の高い新たな裁判手続(非訟手続)が導入されました。これにより、匿名の投稿者を特定できる可能性が以前よりも高まっています。
解説
ここからは、不倫問題が原因で社会的非難を受ける場合の具体的な対応策について詳しく解説します。
1)社会的非難を受ける具体的なケース
不倫問題が一度露見すると、当事者は以下のような形で社会的な制裁や権利侵害に直面するリスクがあります。
- SNSや匿名掲示板での拡散
匿名性を盾にした誹謗中傷や、「晒し」行為が行われることが最も多いケースです。不倫の事実だけでなく、人格を攻撃するような言葉、あるいは虚偽の事実が加わり、個人の名誉が毀損されます。 - 個人情報の暴露(Doxing)
氏名、住所、勤務先、家族の写真などが本人の同意なくインターネット上に公開されるプライバシー侵害です。これにより、当事者だけでなく、家族にも危険が及ぶ可能性があります。 - 職場や地域社会での信用の低下
噂が広まることで、職場での立場が悪化したり、地域社会で孤立したりするなど、社会生活の基盤が脅かされます。
2)非難に対する初期対応:証拠保全と専門家への相談
前述の通り、最も重要な初期対応は「証拠保全」です。
- 該当するウェブページのURLを控える。
- 投稿内容、投稿日時、アカウント名(ID)などが明確に写るように、PCまたはスマートフォンの画面全体をスクリーンショットで保存する。
- 動画の場合は、画面録画機能で保存する。
これらの証拠を確保したら、感情的に反論やコメントを書き込むことは絶対に避けてください。反論がさらなる「炎上」を招き、相手に新たな攻撃の材料を与えるだけになることが多いためです。速やかに弁護士に相談し、法的な対応を検討することが賢明です。
3)法的措置①:【重要・法改正】発信者情報開示請求の新たな手続
匿名の投稿者に対して損害賠償請求などを行うには、まずその人物を特定する必要があります。この手続が「発信者情報開示請求」です。
- 旧制度の問題点
2022年の改正以前は、手続が非常に煩雑でした。被害者は、まずX社やGoogle社などのプラットフォーム(コンテンツプロバイダ)に対して訴訟を起こし、投稿者のIPアドレスやタイムスタンプを開示させ、次にそのIPアドレスから判明したNTTやソフトバンクなどの通信事業者(アクセスプロバイダ)に対して再度訴訟を起こし、契約者情報(氏名・住所)を開示させるという、二段階の訴訟が必要でした。このプロセスには時間がかかり、第二段階の訴訟中に通信事業者のログ保存期間が経過してしまい、情報が削除され特定に至らないケース(「ログ落ち」)が発生していました。 - 新制度(2022年10月施行)による改善
改正法(通称:情報流通プラットフォーム対処法)は、この問題を解決するため、「発信者情報開示命令事件」という新たな裁判手続(非訟手続)を創設しました。- 一体的な審理
被害者は、プラットフォームと通信事業者を同時に相手取り、一つの手続で申立てができるようになりました。これにより、審理が迅速化されました。 - ログ保全(消去禁止命令)
裁判所は、プラットフォームへの開示命令申立てと同時に、通信事業者に対してログの消去禁止命令を発令できるようになりました。これにより、審理中に「ログ落ち」するリスクが劇的に減少し、被害者救済の実効性が高まりました。 - 開示範囲の拡大
従来の投稿時情報に加え、プラットフォームへの「ログイン時」の情報(例:SMS認証で使った電話番号など)も開示対象となることが明確化されました。
- 一体的な審理
この新制度により、匿名投稿者の特定は以前に比べて格段に行いやすくなりました。
4)法的措置②:損害賠償請求と削除要請
- 損害賠償請求
発信者を特定できた場合、その人物に対し、名誉毀損やプライバシー侵害に基づく損害賠償(慰謝料)を請求します。不倫の事実を公表された場合、それが事実であっても、公表の態様や内容が悪質であれば名誉毀損やプライバシー侵害として法的責任を追及できる可能性があります。 - 削除要請
プラットフォームに対し、名誉毀損やプライバシー侵害にあたる投稿の削除を要請します。改正法では、一定の大規模プラットフォーム事業者に対し、被害申出の方法を定めて公表する義務が課されるなど、削除申出の手続に関する透明性の確保も図られています。
5)信頼回復と生活の安定
法的手続と並行し、信頼回復に向けた行動も必要です。
- 公式なコメントの発表
必要に応じて、誠実な謝罪と事実関係の説明、再発防止策を明確に示すことが求められます。ただし、何をどこまで公表するかは、法的リスクを伴うため、弁護士との十分な協議が必要です。 - 透明性の確保と社会的責任の履行
問題解決のプロセスを(可能な範囲で)明確にし、職場での業務や地域活動などに真摯に取り組む姿勢を示すことで、失われた信頼を少しずつ取り戻していく努力が必要です。
弁護士に相談するメリット
不倫問題による社会的非難という危機的状況において、弁護士のサポートは重要です。
- 改正法に対応した迅速な法的対応
2022年の改正法に基づく新たな発信者情報開示手続は専門的な知識を要します。弁護士は、この複雑な手続を迅速に進め、証拠保全から投稿者の特定までを強力にサポートします。 - 損害賠償・削除請求の代理
精神的負担が大きい相手方との交渉や法的手続を代理します。法的に適切な主張構成で、名誉回復と経済的損失の補填を目指します。 - 広報戦略とリスク管理
公式コメントの発表やメディア対応が必要な場合、どの情報をどのタイミングで出すべきか、法的リスクと社会的影響を考慮したアドバイスを提供します。 - 感情的な対立の回避
当事者同士が直接やり取りすると、感情的な対立が激化しがちです。弁護士が介入することで、冷静かつ法的な議論に基づいた解決が可能となります。
まとめ
- 不倫問題による社会的非難は、SNSでの拡散や個人情報の暴露など、深刻な権利侵害を伴うことが多い。
- 非難を受けた場合、まずは冷静に証拠を保全し、感情的な反論は避ける。
- 2022年施行の改正プロバイダ責任制限法により、新たな裁判手続が導入され、匿名投稿者の特定が以前より迅速かつ実効的に行えるようになった。
- 「消去禁止命令」の活用で、ログが削除されるリスクを軽減できる。
- 発信者を特定した後は、損害賠償請求や削除要請といった法的措置を講じることが可能。
- 弁護士は、最新の法制度を駆使した法的対応から、リスク管理、広報戦略のアドバイスまで、一貫した支援を提供し、名誉と社会的信頼の回復を目指します。
不倫問題が原因で社会的非難を受け、名誉毀損やプライバシー侵害にお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
長瀬総合のYouTubeチャンネルのご案内
法律に関する動画をYouTubeで配信中!
ご興味のある方は、ぜひご視聴・チャンネル登録をご検討ください。
その他のコラムはこちらからお読み下さい

