2025/12/05 コラム
不倫問題が家庭の生活基盤に与える影響とその対策
~家庭の安定を取り戻し、生活基盤を守るために~
はじめに
不倫問題の発覚は、夫婦間の精神的な信頼関係を破壊するだけでなく、慰謝料の支払い義務の発生や、離婚に伴う財産分与・養育費の問題など、家庭の「生活基盤」そのものに深刻な影響を及ぼします。経済的な安定が失われることは、当事者のみならず、子どもたちの生活環境にも直結する重大な問題です。
特に、離婚後の生活設計については、法的な知識が不足していると、受け取れるはずの財産や養育費を適正に受け取れなかったり、逆に過大な支払いを約束してしまったりするリスクがあります。
本稿では、不倫問題が家庭の生活基盤に与える具体的な影響を整理するとともに、2024年(令和6年)に成立した民法改正(家族法改正)の最新情報を踏まえ、財産分与や養育費に関する新たなルールと、生活基盤を守るための対策について解説します。
不倫問題に伴う慰謝料請求、財産分与、養育費の取り決めなど、法的手続きのサポートが必要な方は、ぜひ当事務所へご相談ください。
Q&A
Q1:不倫問題が家庭の生活基盤に与える主な経済的影響は何ですか?
大きく分けて以下の3点が挙げられます。
- 慰謝料の支払い
不倫をした側(有責配偶者)は、配偶者および不倫相手に対して、精神的苦痛に対する慰謝料の支払い義務を負います。この支払いが家計を圧迫します。 - 財産分与
離婚する場合、婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産を分割する必要があります。自宅や預貯金など、生活の基盤となっていた財産が分割対象となります。 - 離婚後の収入減少
世帯収入が減少し、特に子どもを引き取る側(多くの場合、母親)が経済的に困窮するリスクがあります。また、養育費の取り決めが不可欠になります。
Q2:離婚時の財産分与で注意すべき点は何ですか?
重要なのは「対象となる財産を正確に把握すること」と「請求できる期間」です。相手が財産を隠している(「財産隠し」)ケースも少なくありません。また、これまでは離婚後2年以内に請求する必要がありましたが、この期間が法改正で変更されました。
Q3:【法改正】2024年に成立した民法改正で、財産分与や養育費のルールが変わると聞きました。
はい、非常に重要な変更があります。特に生活基盤の安定に直結する点として、①財産分与の請求期間が離婚後2年から5年に伸長されたこと、②相手の財産開示を裁判所が命じる制度が強化されたこと、③養育費の取り決めや支払いを確保しやすくする新制度(法定養育費など)が導入されたことが挙げられます。
解説
ここからは、不倫問題が家庭の生活基盤に与える影響と、2024年の法改正を踏まえた最新の対策について詳しく解説します。
1)不倫が生活基盤に与える具体的な影響
慰謝料の発生
不倫(不貞行為)は、配偶者の権利を侵害する「不法行為」にあたります。これにより、不倫をした配偶者および不倫相手は、精神的苦痛に対する慰謝料の支払い義務を負います。
慰謝料の金額は、婚姻期間の長さ、不貞行為の態様・期間、不倫が原因で離婚に至ったか否か、子どもの有無などを考慮して算定されます。近年の裁判例では、離婚に至ったケースで160万円から300万円程度の範囲で認定される事例が見られます。この支払いが、家計にとって大きな負担となることは間違いありません。
離婚に伴う財産分与
離婚する場合、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産(共有財産)を分割します。これは、名義がどちらにあるかを問わず、原則として2分の1ずつ分割されます(2分の1ルール)。対象となるのは、預貯金、不動産(自宅など)、有価証券、生命保険(解約返戻金)、退職金(婚姻期間に相当する部分)などです。不倫をした側(有責配偶者)であっても、財産分与を請求する権利は原則として認められます。
生活環境の不安定化
離婚により、世帯収入が大きく変動します。特に専業主婦(夫)であったり、パートタイムで働いていた側が子どもを引き取った場合、養育費を受け取ったとしても、生活水準が大幅に低下するリスクがあります。
2)生活基盤を守るための具体策(財産分与)
離婚後の生活を安定させるためには、財産分与を適正に行うことが極めて重要です。しかし、相手が財産を隠したり、誠実な開示に応じなかったりするケースが後を絶ちませんでした。
3)【2024年民法改正】財産分与の重大な変更点
2024年5月に成立した改正民法(2026年5月までに施行)は、財産分与における問題を解決するため、以下の重要な変更を行う予定です。
変更点1:請求期間の「5年」への伸長
- 【旧】離婚成立から2年
- 【新】離婚成立から5年
これまでは、離婚後2年以内に財産分与の請求(調停申立てなど)を行う必要がありました。しかし、離婚直後の混乱期に相手の財産を調査し、法的手続を取ることは負担が重く、請求権を失ってしまうケースがありました。今回の改正で請求期間が5年に大幅に伸長されることで、離婚後に落ち着いてからでも、十分な調査と準備の上で適正な財産分与を請求できるようになる見込みです。
変更点2:財産開示手続の強化
離婚の話し合いや裁判手続において、相手がどのような財産を持っているか把握することは困難でした。改正法では、裁判所が必要と認める場合、当事者に対して財産の状況に関する情報の開示を命じることができるようになる予定です。
変更点3:考慮事項の明確化
財産分与の額や方法を定める際に裁判所が考慮すべき事情(婚姻中の寄与の程度、生活水準、年齢、収入など)が法律に明記され、より公平な解決が図られることが期待されます。
4)【2024年民法改正】養育費の確保策
子どものいる家庭では、養育費の確保が生活基盤の維持に直結します。今回の改正では、養育費の確保策も強化されました。
「法定養育費」制度の新設
養育費の取り決めがないまま離婚した場合でも、子どもを監護している親が他方の親に対し、一定の要件のもとで法律上当然に発生する養育費(法定養育費)を請求できる制度が新設されました。これにより、養育費の請求が容易になります。
生活保持義務の明確化
改正法は、親には「子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない」という義務(生活保持義務)があることを明確に規定しました。これは、養育費の算定において、親の生活水準と同等の水準を子どもにも保障すべきであるという考え方を法律上裏付けるものです。
民事執行手続(差押え)の容易化
養育費の不払いがあった場合に、財産を差し押さえるための民事執行手続が、より迅速かつ容易に行えるように改善されました。
5)家計の見直しと再計画
法的な取り決めと並行して、現実的な家計の見直しが必要です。
- 収入と支出の把握
慰謝料、財産分与、養育費、公的支援(児童扶養手当など)を含めた総収入と、住居費、教育費などの支出を正確に把握します。 - 専門家の活用
弁護士だけでなく、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談し、中長期的な生活再建プランを立てることも有効です。
弁護士に相談するメリット
不倫問題による生活基盤の危機に際し、弁護士は法律面から家庭の安定をサポートします。
- 改正法を駆使した適正な財産分与の実現
弁護士は、新たな「5年」の請求期間や「財産開示命令」といった法的手段を最大限に活用することで、相手の「財産隠し」を許さず、依頼者の貢献に見合った適正な財産分与の獲得を目指します。 - 養育費の計算と確実な支払いの確保
裁判所の算定表に基づく適正な養育費を計算し、交渉します。合意内容は、将来の不払いに備えて強制執行が可能な「公正証書」として残すことを強く推奨します。改正法に基づく新たな養育費請求もサポートします。 - 慰謝料請求の代理
不倫の精神的苦痛に対する慰謝料について、裁判例に基づき適切な金額を算定し、配偶者や不倫相手に対して請求・交渉を行います。 - 迅速な問題解決
感情的な対立が生まれやすい離婚協議を、弁護士が法的な論点に絞って整理し、代理人として交渉することで、冷静かつ迅速な解決を図り、早期の生活再建を支援します。
まとめ
- 不倫問題は、慰謝料、財産分与、養育費の問題を通じて、家庭の生活基盤に深刻な影響を及ぼす。
- 2024年の民法改正により、離婚後の生活基盤を守るためのルールが大幅に強化される予定。
- 財産分与の請求期間は「2年」から「5年」に伸長され、財産開示制度も強化される見込み。
- 養育費についても、「法定養育費」の新設や生活保持義務の明確化など、確保策が充実する見込み。
- 弁護士は、これらの最新の法制度を駆使して、依頼者の経済的利益を最大化し、生活基盤の再構築を法的にサポートします。
不倫問題が家庭の生活基盤に与える影響や、離婚に伴うお金の問題でお悩みの方は、ぜひ弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。
長瀬総合のYouTubeチャンネルのご案内
法律に関する動画をYouTubeで配信中!
ご興味のある方は、ぜひご視聴・チャンネル登録をご検討ください。
その他のコラムはこちらからお読み下さい

